第25回 AIと人間が会話するために、言語を再定義しました! 〜AI→人間言語を再定義


AIは、なぜ、言葉の意味を理解できないんでしょう?
じつは、人間って、普通に会話してても、複数の世界を瞬時に切り替えながらしゃべってるんですよ。
じゃぁ、複数の世界ってどういうことでしょう?
詳しくは、本編で説明します!

ロボマインド・プロジェクト、第25弾
こんにちは、ロボマインドの田方です。

今回から、言語編が始まります。
言語編では、意識編で説明した意識の仮想世界仮説を使って、言語とは一体何か、について解説していきます。

さて、人間だけが持っていて、動物が持っていないのが言葉です。

言葉を話すのは、人間だけですが、人間以外の動物も吠えたり鳴いたりしますよね。
犬は、人が何か食べてたら、ワンワンと吠えたりします。
これは、自分にも、それをくれと言ってるわけです。

口から音をだして相手に伝えるというだけの行為なら、人間以外の動物もできているわけです。
これだけでは、人間と動物の決定的な違いとはならないようです。

意識は、頭の中の仮想世界を認識するんでしたよね。
そして、人間だけが持っているのは、意識が自由に操作できる想像仮想世界でしたよね。

言語は、この、想像仮想世界に深く関係があります。
もう少し、探ってみましょう。

相手の持っている食べ物を、くれと言うだけなら、犬でもできるわけです。
でも、交換の場合、どうでしょう。

山に住んでいて、いつも、木の実を食べてるとします。
たまには、海の魚を食べたいなぁと思ったとします。

海の近くに住んでる人は、いつも、魚を獲って食べています。
そこで、海の近くに住んでる人と、木の実と魚を交換したいと思ったとします。
これは、どうすれば伝えることができるでしょう。

簡単なようで、これ、結構厄介な問題です。
相手の持ってる魚と、自分の持ってる木の実を指差して、身振り手振りで説明したとしましょう。
これで、相手が「あぁ、木の実と魚を交換したいんだな」と思って交換が成立するのは、相手が「交換」の意味を理解している場合です。

自分の木の実を置いて、無理やり、相手から魚を奪って持ち帰ったとしても、相手は追いかけてくるでしょう。

「交換」するという意味を理解していない限り、交換は成立しないわけです。

それでは、交換の意味とは、どうやって定義すればいいんでしょう。
AさんとBさんが交換するとは、Aさんの持っている物をBさんにあげて、Bさんが持っている物をAさんにあげることです。

じゃぁ、物をあげるとは、どういうことでしょう?
Aさんが手に持っている物をBさんに渡して、Bさんが受け取ったということでしょうか?

たとえば、田舎のおじいちゃんからサクランボが送られてきたとします。
玄関で、ヤマトの配達員さんから、サクランボを受け取ってら、配達員さんからサクランボをもらったと思うでしょうか?
配達員さんに、「こんなにサクランボもらっていいんですか?」とか言わないですよね。

つまり、「物をあげる」って行為は、手で渡すとかじゃないんです。
目で見てわかる以外の物が渡されているってことです。
じゃぁ、それは何でしょう?
わかりますか?

それは、「所有権」です。
物には、所有者がいるという考えです。
勝手に人の物を使ってはいけないってことです。

物理的に手で持つとは別に、「所有する」という考えが必要なんです。
「所有する」って、目で見えないですよね。
お金の価値と同じです。
1万円札は、紙である素材の価値と、1万円札の価値は全く違います。
でも、1万円札に、1万円の 価値が感じられるのは、頭の中に1万円の価値があるからです。
それと、もう一つ重要なのは、その価値は、自分だけでなく、他の人も持っているということです。
社会で共有してるってことです。

「所有権」も同じです。
それは、頭の中にあって、社会で共有しているんです。

それでは、所有権について考えていきましょう。
物をあげたり、交換したりするのは、どうやら、所有権が移動しているようです。
3次元世界と比べて考えていきます。

3次元世界では、3次元空間を設定して、その中で位置とか移動といった言葉を定義していきましたよね。
何がどの位置にあるといった世界の状態や、物が移動するとか、回転するとかの動きで3次元世界は表現できるわけです。

所有権も同じです。
誰が何を持っているという状態と、物をあげるとか、もらうといった動きがあるわけです。
つまり、所有権というのは、3次元世界とは別の、一つの世界を創るわけです。
それを、所有権世界と呼ぶことにします。
3次元世界とは別に、所有権世界というものがあるという考えです。

わかりますか?
ここ、ものすごく重要なんで、丁寧に説明していきますね。
今、やろうとしてるのは、言葉をどうやって理解するかということです。
一番分かりやすいのが、3次元世界なので、今まで、3次元世界しか扱ってきませんでした。

3次元世界は目で見えるので分かりやすいです。
でも、人間は、目に見えないものも扱います。
3次元世界とは別の世界があって、その世界には、その世界のルールがあるわけです。

人は、会話するとき、自然と世界を切り替えているわけです。
あまりにも自然に切り替えているので、気づかないですが、コンピュータに理解させるためには、それを丁寧にプログラミングしていかないといけないんです。

荷物を受け取る時、3次元世界で荷物を受け取りますが、ヤマトさんからサクランボを貰ったわけじゃないってことを理解してますよね。
3次元世界で受け取りながら、頭の中では、所有権世界でおじいちゃんのサクランボの所有権が自分に移ったと解釈してるわけです。

言葉を理解するとは、こういう言ことなんです。
今、どの世界の話をしてるのか、切り替えながら、その世界の言葉を使って会話するわけです。
それを間違えると、言葉が通じない、意味が分かっていないとなるわけです。
配達員さんに、「サクランボくれてありがとう」ってお礼を言ったら、意味がわかってないって思われるわけです。

言葉の意味を理解するとは、こういうことなんです。
それでは、所有権世界を定義していきましょう。

まず、所有権世界に登場するのは物と人です。
3次元世界では、世界の状態は物の位置で定義しました。
所有権世界は何でしょう?
それは、物の所有者は誰かということです。
つまり、物に所有者っていう属性を作ります。
そこに、Aさんとか、Bさんとか、所有者を設定するわけです。
これで、その物の所有者がAさんとなるわけです。

それでは、次に、物をあげるの「あげる」を考えましょう。
「あげる」の反対は、「もらう」です。
「あげる」も「もらう」も、所有権世界の変化です。
変化とは何でしょう?
それは、所有権の移動です。


所有権の移動を、所有権を譲る立場から見れば「あげる」となるわけです。
逆の立場から見れば「もらう」となるわけです。
世界の変化は、見る立場によって言葉が変わるわけです。


だから、「あげる」とか「もらう」を定義するんじゃなくて、所有権の移動としてを定義すべきなんです。
「所有権の移動」というプログラムを実行すると、物の所有者として設定されていたAさんが、Bさんに書き換わって、所有権の移動が行われるわけです。

これをAさんから見れば、物をあげるとなるわけです。
Bさんから見れば、物を貰うとなるわけです。

ようやく、「あげる」と「もらう」が定義できましたね。
次は、交換を定義してみましょう。

所有権の移動が定義できれば、交換も定義できます。
Aさんが所有する物の所有権をBさんに書き換えて、Bさんの所有する物の所有権をAさんに書き換えるわけです。
これで、交換が定義できるわけです。

もう少し、所有権世界の言葉を考えてみましょう。
「貸す」はどうでしょう?
「ちょっと、ハサミを貸して」と言うときの貸すです。
これも、所有権世界ですよね。

「貸す」と「あげる」は、何が違うのでしょう?
「AさんがBさんにハサミを貸す」といった場合、所有権世界は、何が変化するのでしょう。

ハサミを使うことができるのは、所有者です。
AさんがBさんにハサミを貸す場合、所有権は移動しないですが、Bさんもハサミを使うことができます。
ハサミを使う権利が移動したわけです。
使う権利のことを使用権としましょう。
つまり、「貸す」場合、所有権は移動しないですが、物と、使用権が移動すると言えます。
物の属性に、使用権を追加して、使用者をAさんからBさんに書き換えれば、「貸す」を定義できますね。

AさんがBさんに物を貸すと、その物の所有者はAさんですが、使用権はBさんとなるわけです。
Bさんは、いつまでもハサミを借りっぱなしというわけにはいかないですよね。
ハサミでもお金でも、借りたら返さないといけません。

借りてる人は、所有者に、その物を返さないといけません。
これは、義務ですね。
貸してる人は、その物を返してもらう権利があります。

こんな風に、言葉を定義していくわけです。
こうやって、言葉を定義して、初めて言葉の意味を理解できるようになるわけです。

さて、このロボマインド・プロジェクトシリーズ、前半のAIの限界編では、ディープラーニングなどの機械学習を使った自然言語処理を散々、disってきましたよねぇ。
グーグルのBERTとかのことですけど。

自然言語処理の機械学習って、単語の数を数えて統計処理してるだけです。
どの単語の近くに、どんな単語が出現するかの確率を計算してるだけです。
それで、言葉の意味が理解できたって、ちょっとおこがましいと思いませんか?

表面に現れることだけ見て、意味が理解できたって、言葉に対して、失礼です。
表面的に表れてるのは、言葉が表す世界の、ほんの一部です。
表に現れないとこに、本質があるわけです。

「あげる」とか「貸す」って言葉の意味を理解するには、絶対に、分かっていないといけないことがあります。
それが、所有権です。


所有権が移動したり、使用権が移動したり。
表面的な言葉の裏で動く原理、仕組みまで理解していないと、言葉の意味は絶対に理解できないんです。

本当の意味で、言葉の意味が理解できるAIを開発してるのは、世界中でただ一つだけです。
そらが、ロボマインド・プロジェクトです。

次回も言葉について、さらに考えていきたいと思います。
それでは、次回も、お楽しみに!