第573回 芸能人目撃多発小さいおじさんの正体


ロボマインド・プロジェクト、第573弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

小さいおじさんって知っていますか?
流行ったのは2000年代後半です。
僕も見ていましたけど、きっかけはダウンタウンDXだと思います。
有名なのは、渡辺徹の話です。
旅館で寝ていた時、障子がちょっとだけ開いたそうなんですよ。
そしたら、10cmぐらいのちっちゃいお侍さんが出てきて、とことことこと歩いてきて、テーブルに置いてあったイチゴをこうやってもって、ガブってかじったそうです。
それから、実家で換気扇がカタカタ鳴るから調べてほしいと言われて調べに行ったそうです。
そしたら、夜中にカタカタ音がして、換気扇が勝手に回り始めたそうです。
何だろうと思って、そぉ~っと見てみたら、換気扇の羽の上に小さいおじさんが乗っていて、こうやって走ってハツカネズミみたいに換気扇を回していたそうです。
顔をみたら、先日亡くなった叔父さんだったそうです。

当時のダウンタウンDXは、そのほかにも、小さいおじさんを見たって芸能人がいっぱい出演していました。
たとえば、的場浩司は、京都の旅館で、横になってうとうとしてたら、耳元で何か声がしたそうなんですよ。
聞いてたら、「おーい、こっちは大丈夫だ」とか、
「こっちも押さえたぞ」って聞こえたそうです。
目を開けたら、胸の上に小さいおじさんが乗っていて、こうやって胸を押さえていたそうです。
横見たら、他にも何人か小さいおじさんがいて、腕を押さえいていたそうです。
びっくりして、起き上がったら、ワーってみんな逃げだしたそうです。
それで、待てーって追いかけたら、お風呂のドアの下の隙間に入って行って、それで、ドアをバッと開けたら、もう、誰もいなかったそうです。

それから釈由美子もよく見たそうです。
仕事がうまくいかなくて、お風呂で泣いていたら、「大丈夫、きっと、大丈夫だよ」って声がしたそうです。
はっと顔あげたら、小さいおじさんが、うんうんってうなずきながら励ましてくれてたそうです。
びっくりして、思わずシャワーのお湯をかけたら、「あれ~」って言いながら排水溝に流れていったそうです。
そのあとも、ジャージを着た小さいおじさんを見たとか、ジャージには「村田」って書いてあったとか、釈由美子は何度も小さいおじさんを見ています。
さっき、ネットで検索したら、今も小さいおじさんを見るそうで、この前は映画館で椅子の下を見たら、小さいおじさんがポップコーンを拾って食べてたそうです。

なんで小さいおじさんの話をしたかというと、今、読んでるオリヴァー・サックスのこの本『幻覚の脳科学』にも同じような話が出てきたんです。

前回、オリヴァー・サックスは、ほとんど薬物依存だったところを、片頭痛診療所で働き始めて薬物を経つことができたって話をしましたよね。
片頭痛が起こる前って、閃輝暗点っていう前兆が見えることがあるんです。
最初、視界の中にチカチカする点とかモザイクが見えます。
それが数分後、だんだん広がっていきます。

それは、キラキラしたギザギザが円弧上に広がったり、円形に広がったりします。
中には虹色の色が見える人もいます。
そして、数十分かけてゆっくり広がって、やがて視界の外に消えていきます。
そのあと、吐き気を伴うひどい頭痛がします。
これが片頭痛です。

サックス先生も、閃輝暗点が見えるそうですけど、そのあとの頭痛は起こらないそうです。
僕はその逆で、頭痛持ちですけど、閃輝暗点は見たことがないです。

サックス先生は、片頭痛診療所で働いていたので、片頭痛の様々な前兆を聞いたそうです。
その中には、閃輝暗点以外に、幻覚を見る人も結構いて、中には小さいおじさんを見る人もいたそうです。
これが今回のテーマです。
芸能人目撃多発
小さいおじさんの正体
それでは、始めましょう!

片頭痛のメカニズムは、今ではかなりわかっています。
まずはニューロンのおさらいです。

ニューロンは長い軸索を介して別のニューロンの細胞体につながっています。
ニューロンの周りは液体で、外がプラス、内がマイナスとなって電位差があります。

細胞体が興奮すると、外からプラスを取り込んで活動電位が発生します。
これを脱分極といいます。
この活動電位は軸索の中でドミノ倒しのように次々に伝播して次のニューロンに伝わります。
これを神経インパルスといいます。

さて、目からの情報は、後頭葉の第一視覚野V1に送られて、V2、V3、V4と順番に情報伝達されます。
これが通常のニューロンの情報処理です。

ところが、ストレスや気圧の変化、食べ物などがきっかけとなって、ニューロンの活動バランスが崩れることがあります。
すると、後頭葉の一部で、ニューロンが一斉に脱分極することがあります。
そして、脱分極は波のようにゆっくりとV1からV2、V3へと広がっていきます。

軸索を伝わる神経インパルスの速度は一秒に数m~数10mとかなり高速です。
一方、脱分極の波はゆっくりで、一分に数㎜程度です。
だから、波が発生して収まるまで2~30分かかります。
そして、この間に、閃輝暗点が見えます。

脱分極の波が起こると、脳血流が一時的に低下するので、波が収まった後、脳血流を回復する動きが発生します。
この時、痛み物質が放出されるため、頭痛が起こります。
これが、片頭痛です。

次は、閃輝暗点が見えるメカニズムについて説明します。
網膜からの映像は、最初、V1に投影されます。

V1では線の傾き分析して、V2でV3とV4に経路を分岐させます。
V3は、動きや奥行き、立体構造を分析します。
V4は色や形の分析をします。
V3から頭頂葉に向かう経路は背側視覚路といって動きや奥行きを分析します。
V4から側頭葉に向かう経路は腹側視覚路といって色や形を分析します。

さて、これがV1です。

ここには方位円柱といって傾きを分析するニューロンがあります。
方位円柱は10度単位で約20種類あって、0度~180度の傾きを検出します。
この20個のニューロンがひとまとまりとなったものをハイパーカラムといって、これがV1全体に約3000個あります。
例えば飛んでるボールを見たとしましょう。
まず、V1でボールの境界線を抽出します。

このときAのハイパーカラムは0度、Bのハイバーカラムは45度、Cのハイバーカラムは90度と角度を分析します。
V1は網膜からの映像がそのまま投影されるので位置情報も持ちます。
だから、V1で、それぞれの位置と境界線の傾きを分析して次に送ります。
V4では位置と傾きの情報から、全体としてこれは丸い形だと判断します。
さらに、V4では色も分析して、白い色だと分析します。
また、V3では、動きと奥行きなどの立体を解析します。
以上の結果、白くて丸いボールが飛んでいると分析されます。

この分析結果を基に脳の中に仮想世界が作られます。
この場合だと、ボールが飛んでいる仮想世界を作ります。
仮想世界を作るのは無意識です。
そして、意識はその仮想世界を見ます。
これが、目の前を白いボールが飛んでいるのを見るということです。
目の網膜がとらえてから、仮想世界が作られるまで0.5秒かかると言われています。

さて、ここからが本題です。
V1には傾きに反応するハイパーカラムが約3000あって、通常は、一つのハイパーカラムで一つの傾きを検出します。
だから、それをつなげると全体の形がわかるわけです。

今、V1の中心部で一斉に脱分極が起こったとしましょう。
つまり、一斉にニューロンが活性化するわけです。
すると、何が起こるかというと、同じ個所ですべての傾きが活性化します。
すると、仮想世界をつくる無意識は混乱しますよね。
これじゃぁ、形を作れません。
だから、とりあえず、仮想世界の中心部付近に点かモザイクをキラキラを作り出します。
これが閃輝暗点の最初です。

そして、脱分極の波はV1をゆっくり広がります。
V1は、網膜の映像そのまま投影されているので、V1で広がる波は、物体が空間を広がるさまとして捉えられます。
これが、閃輝暗点がゆっくり広がっていく動きです。

さらにV4では、形を分析します。
このとき、物体の境界の全ての傾きが反応しているので、それを無理やり形にするとすればギザギザになります。
だから、閃輝暗点はギザギザに見えるんです。

V4では、色も分析します。
色を分析するニューロンもすべてが活性化してるとすると、7色になります。
だから、人によっては7色に光り輝いて見えるわけです。
これが閃輝暗点が見えるメカニズムです。

さて、ここで一番いいたいのは、僕らの意識が見ている世界は何かってことです。
それは、無意識が作る仮想世界です。
現実世界を直接見ているわけじゃないってことです。

そして、仮想世界を作る部品は、脳の中に予めあります。
その材料を使って無意識が世界を組み立てるわけです。
世界を作る材料というのが、線の傾きとか色とか動きです。

通常は、目の網膜からの視覚情報によって材料となるニューロンが活性化します。
したがって、外の世界がそっくり脳内の仮想世界で再現されるわけです。
ところが、外の世界がきっかけじゃなくて、脳内の脱分極がきっかけで世界を作るニューロンが活性化する場合があります。
無意識は、ニューロンの活性が、網膜からか、脳内で起こったのか、その違いを区別せずに仮想世界を無理やりででも作ります。
そうやってできたのが閃輝暗点です。

閃輝暗点の材料は、線の傾きとか色とか形、動きといった低レベルの視覚情報です。
だから、何かよくわからないけどギザギザでキラキラ光る形といった抽象的な物体となります。

でも視覚処理は、さらに高レベルの分析があります。
たとえばIT野では、その物体が人か動物か、または文字かといったカテゴリ分類を行います。

さらに、紡錘状回顔領域では顔を分析します。
海馬傍回場所領域では、建物や場所を分析します。
上側頭溝領域では歩くとか走るといった体の動きを分析します。

分析するというのは、言い換えると仮想世界に物体を作り出すということです。
仮想世界に作り出す物体のことを、僕はオブジェクトと呼んでいます。
たとえば、リンゴなら3Dのリンゴオブジェクトを作って、それを脳内の仮想世界に配置します。
リンゴオブジェクトは、色は赤で形は丸といったデータを持っています。
これがV4で分析された色や形のデータです。

オブジェクトに色や形のデータが付与されて、物体として形作られて仮想世界に配置されるわけです。
さらに高レベルの処理では、人の顔や動きまでオブジェクトにデータが与えられます。
データが与えられるとは、対応するニューロンが活性化したということです。

サックス先生のは片頭痛診療所にいるとき、様々な幻覚をみる患者を診察しました。
たとえば、ある人は、ベッドで横になって本を読んでいるとき、ふと、下を見ると、小さいおじさんを見たそうです。
おじさんは、高さが15くらいで、ピンク色をしていたそうです。
おじさんの隣には、ピンク色の牛がいたそうです。
色以外は、とてもリアルで、あたりを歩き回っていたそうです。
数分間、そこにいたそうですけど、突然消えたそうです。

今までの話から、小さいおじさんが、どうやって生まれたかわかりますよね。
おそらく、何らかのきっかけで脳で脱分極が起こったんでしょう。
その時、人と牛のニューロンが活性化したんです。
さらに、大きさは15cmで、色はピンクのニューロンも活性化したんです。
だからピンクの小さいおじさんと牛が現れたんです。

これで小さなおじさん現象、すべて説明できますよね。
渡辺徹が見た小さいおじさんは、先日亡くなった叔父さんの顔のニューロンが活性化したんでしょう。
さらに「走る」のニューロンも活性化したんでしょう。
だから、換気扇の上で必死で走っていたんです。

たぶん、人によって、活性化しやすいんでしょう。
だから、釈由美子は何度も小さいおじさんを見るんでしょう。
日本中で目撃された小さいおじさん、すべて脳内現象で説明がつきました。

と言いたいところなんですけど、実は、そうでもないんですよ。
今回、あえて省略したエピソードがいくつかあります。

たとえば渡辺徹が見たイチゴを食べるちっちゃいお侍さん、
じつは、奥さんの郁恵ちゃんも見てたそうです。
ふたりが同じちっちゃいおじさんを見ることってあるんですかねぇ。
しかも、テーブルの上に残されたイチゴには、ちっちゃいかじられた跡が残っていたそうです。

それから、的場浩司を押さえつけてたちっちゃいおじさん。
体を押さえつけてただけじゃなくて、髪の毛を糸で床にくくりつけていたそうです。

まさに、ガリヴァ旅行記です。
起き上がるとき、髪の毛が、ブチブチブチって音がしたそうです。
髪の毛をみてみると、ちっちゃい糸がいっぱい結び付けられていたそうです。
証拠として、その時の写真も撮ってて、他の人も見たそうです。
そのあとドラマの撮影があったそうで、かつら屋さんに見てもらったら、こんな細かい結び目作れないって言ってたそうです。
いやぁ、この世の中には、解明できない不思議な現象、まだまだいっぱいあるみたいです。



はい、今回はここまでです。
この動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
そらじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!