ロボマインド・プロジェクト、第579弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。
幽体離脱ってありますよね。
体から魂が抜け出ることです。
実は、僕も経験したことがあるんですよ。
たしか、中学二年の時です。
中のいい友達が、幽体離脱の方法を教えてくれました。
仰向けで寝て、胸の上で手を組みます。
そして、上からゆっくりピラミッドが降りてくるのを想像します。
そして、10㎝上ぐらいまで来たとこで、「ファラオ!」って心の中で叫ぶそうです。
そしたら、気が付いたら魂が抜けてるそうです。
まぁ、そんなに簡単できなかったですけど、ある晩、できたんですよ。
夢の中で意識が目覚めた、明晰夢の状態やったと思います。
なんか、「今ならできるかも」と思って体から離れるイメージをしたんですよ。
そしたら、す~っと、足先から宙に浮きあがってきたんです。
この調子やと思って、さらに腰、胸と順に体から離れていったんです。
その時、ふと、思ったんですよ。
「こうして考えているのは脳やし、脳から離れたらどこで考えるんやろ?」って。
そう思ったら、今まで順調に幽体離脱していたのに、頭だけ離れないんですよ。
幽体だけ、斜めになって宙に浮かんでる状態です。
そのとき、親父が起きる音がしたんです。
これ見られたらヤバイって焦ったんですよ。
だって、自分の息子の体から、幽体が抜けかけてるんですよ。
そんなん見たら、腰抜かします。
「戻らな」って思った瞬間、す~っと体に戻りました。
初回は失敗しましたけど、幽体が完全に体を抜けたこともあります。
その時は、気が付いたら家の外に出てました。
下を見たら、隣の家の屋根があって、その上を飛んでいました。
ただ、後から考えると、本当に屋根を見たのかどうか、ちょっと怪しいです。
おそらく、夢の中で空を飛んでいたんだと思います。
ただ、ここで重要なのは、実際に幽体離脱したのかどうかじゃないです。
重要なのは、意識は、どうやって体があると感じているかです。
目が覚めているとき、自分の体があると感じるでしょ。
そう感じるってことは、無意識が体の感覚を作り出しているからです。
それが、明晰夢を見たり、薬物なんかで、意識状態がおかしくなると、無意識も誤作動を起こすんです。
普段は、意識が感じる体と、現実の体はぴったり一致していますけど、それが、ずれることがあるようなんです。
それが、僕が経験した幽体離脱の感覚です。
なんで、こんな話をするかというと、そろそろ、AIロボットもこのレベルを考えないといけなくなってきているからです。
ここ数カ月の人型ロボットの発展は目を見張るものがあります。
たとえば、中国では、ロボット同士の格闘技の試合がすでに行われています。
https://www.youtube.com/watch?v=3ntEiHwIH1Q
(適当に流す)
いずれ、総合格闘技にAIロボットが出場する日がくるでしょう。
だって、AIはチェス、囲碁と人間のチャンピオンと争うことで発展してきましたから。
それから、間違いなくやってくるのが家庭用ロボットです。
これは、ノルウェーの 1X Technologies社のNeo Gammaです。
https://www.youtube.com/watch?v=uVcBa6NXAbk
(適当に流す)
Neo Gammaは、家庭用ヒューマノイドロボットです。
いよいよ、ドラえもんみたいに、ロボットと暮らす日常が現実になりそうです。
なんでAIロボットが重要かというと、AIが体を持つと、自我とか意識が生まれる可能性があるからです。
逆に言うと、ChatGPTは体を持たないから自我や意識が生まれないのかもしれません。
じゃぁ、翻って、人間は、どのように自分とか、自分の体という感覚を持っているんでしょう?
そこで、幽体離脱が参考になるんです。
これが、今回のテーマです。
AIロボットは幽体離脱するか?
それでは、始めましょう!
今、読んでるオリヴァー・サックスの『幻覚の脳科学』に、ナルコレプシーが出てきます。
ナルコレプシーというのは、突然、短時間の睡眠発作がおこる症状です。
食事中に突然眠って、ナイフとフォークを落としてしまうこともあります。
ある人は、1日に200回以上起こるそうです。
ナルコレプシーの患者の中に、カタプレキシーを併発する人もいます。
カタプレキシーは、筋肉の緊張が突然失われるもので、これが起こると、ぐったりと地面に倒れてしまいます。
これを起立発作といいます。
ただ、起立発作が起こっているときは、意識は完全に保たれています。
これが睡眠発作との違いです。
起立発作が起こるきっかけは、強い感情です。
たとえば、笑いによって筋肉の緊張が完全に緩んで立っていられなくなります。
あるカタプレキシーの男性は、喜劇俳優のロビン・ウィリアムズの友人で、ロビンと会うときは、先に床に倒れておくそうです。
そうしないと、笑って倒れて危険だからです。
ナルコレプシーもカタプレキシーも原因はわかっています。
それは、覚醒を維持するオレキシンというホルモンの欠乏です。
オレキシンが減少するとナルコレプシーが発症して、ほぼゼロになるとカタプレキシーが発症します。
ここから意識についていろいろわかります。
意識はオレキシンというホルモンで覚醒して、それが減少すると眠ってしまいます。
また、オレキシンは筋肉の緊張も維持して、オレキシンが完全になくなると、全身の筋肉を動かせなくなります。
ただし、意識は維持されていることから、意識の覚醒にはオレキシン以外も作用するホルモンがあることがわかります。
それはノルアドレナリンやドーパミンなどがあって、それらを安定させる司令塔がオレキシンです。
これらは、ロボットの設計にも関係してきます。
今までのロボットは、二足歩行で歩かせるとか、見た目だけ人間と同じ動きにすることに必死でした。
脳でいえば、運動バランス制御なので小脳などの低次の制御です。
これは、人間だけでなく動物でも持っている脳の制御です。
そこが完成して、今後は、人間しか持っていない高次機能の設計です。
それが、考えたり、行動を決定する意識です。
これは内部の設計なので、外からはわからないのでいかようにも設計できます。
だからと言って何でもいいわけじゃなくて、できるだけ人間に近づけるべきです。
今わかってきたのは、意識は覚醒と非覚醒の状態があることです。
これを制御するのがホルモンで、オン/オフのスイッチの役割があります。
それから体の筋肉を制御するのは無意識で、意識と無意識はそれぞれ独立していて、別々のホルモンが作用するようです。
だからロボット制御の場合も、別制御として、それぞれにオン/オフスイッチがいるはずです。
こうやって意識を設計していくのが正しい意識の解明の方法だと思うんですよ。
何が言いたいかというと、今の意識科学って、あまり関係ないことばかり議論されている気がすんですよ。
たとえば、意識は量子力学だとか、意識は情報だとか、石ころにも意識はあるのかとか。
どれも、探すところを間違えているんですよ。
そこじゃなくて、脳から意識を解明するのが正しいやり方だと思うんですけど、意外と、誰もやらないんですよ。
それはいいとして、本題はここからです。
カタプレキシーって、意識はあるけど、体は動かないって状態でしたよね。
これによく似た症状が金縛りです。
金縛りなら、僕も何度かなったことがあります。
それが、幽体離脱した時です。
中学ぐらいのときとか、寝ていて、夜中に、ふっと目覚めたとき、体が動かないってなることが何度かあります。
キーンて音が聞こえたり、誰かが上に乗ってるような感じがしたり、息苦しさを感じたりもしました。
英語で悪夢のことをnightmareっていいますけど、この「mare」はもともと、眠っている人の胸の上に乗っかって呼吸を妨げる魔女」という意味だそうです。
単語にまでなっているぐらい、世界中で同じことを経験している人がいるってことです。
僕の場合も、まさにそれと同じです。
キーンというのは幻聴で、これもよくあることで、魔女の幻覚を見ることもよくあるそうです。
金縛りは、起きようとしたら動けないですけど、指先とかに集中して動かそうとしたら、比較的簡単に解けます。
ちょっとでも体が動いたら、意識が戻って、普通に体を動かせます。
たぶん、体を動かす制御スイッチがオフになっていたんでしょう。
金縛りも慣れると、慌てなくなって、その状態を楽しむ余裕が出てきます。
金縛りの状態にあるとき、一切の身体感覚がないんですよ。
だから、どっちが上か下かもわからないし、自分がどんな姿勢かもわからないんです。
その状態にあるとき、幽体離脱に成功したんです。
体から自分が抜け出る感覚を感じたわけです。
じゃぁ、その抜け出た自分って何でしょう?
僕が感じたのは、自分の体に入っていた幽体です。
魂と言ってもいいかもしれません。
魂って概念も世界中の文化にありますよね。
世界中にあるっていうことは、人間の脳がそういう概念を扱う機能をもともともっているといえそうです。
どういう機能かというと、肉体としての体と、自分というデータを別に管理するという機能です。
どういうことかというと、脳には運動野と体性感覚野があります。
それはペンフィールドのマップといわれて、体がそっくりそのままマッピングされています。
たとえば手を触られると体性感覚野の手が活性化します。
つまり、僕らが感じている体というのは、脳の体性感覚野にあるわけです。
自分の体と思っているのは、この脳にマッピングされた体の3Dデータといえます。
もっと言えば、自分の体というのは、物理的に存在する肉体とは別だってことです。
さて、僕らは三次元空間にいるって世界観を持っていますよね。
そう思っているということは、そういう世界観を作り上げているからです。
頭の中に仮想的な三次元世界を作って、その中に自分の体の3Dデータを配置しているわけです。
体だけじゃなくて、目に見えるもの全て、頭の中の仮想世界に配置します。
目の前に部屋が見えるのは、頭の中に部屋を作り出しているからです。
触覚情報や、関節の角度情報などから、自分の姿勢、位置を把握します。
そうして、頭の中に作った部屋に、自分の体を配置します。
このとき、肉体としての体の位置と、自分の体の3Dデータがぴったり一致するように制御します。
だから、自分が今、部屋のどこで、どんな姿勢で、どのくらいの大きさでいるかって認識できるわけです。
これが、起きているときに無意識が行っている処理です。
ところが、金縛りになったとき、無意識のこの機能がオフになったんでしょう。
だから、体データだけ、肉体から離れることができたんです。
それを言葉で表現すれば、体から魂が抜け出たとなるんでしょう。
もう少し考えてます。
側頭葉には、顔や建物を認識する場所があります。
見たものが人の顔なら、仮想世界に顔をつくりだしますし、建物なら建物を作り出します。
意識が、顔や建物だと認識するのは、側頭葉のこれらの機能を使って作り出しているからです。
さっき、自分の体は感覚野にある3Dデータだと言いましたよね。
それと同じで、顔や建物の3Dデータが側頭葉にあるわけです。
無意識はこれらを使って仮想世界を組み立てるわけです。
金縛りにあってるとき、感覚器からのデータが遮断されています。
でも、意識ははっきりしています。
無意識は、普段は感覚器からのデータに基づいて仮想世界を作りますけど、金縛りのときはそれがなくなって、その代わり意識からデータが来ます。
だから、体から抜け出たいって意識が思えば、体データを肉体から切り離します。
それと同じで、家の外を自由に飛び回りたいって思ったとします。
すると、記憶から家の外を作り上げるわけです。
その時使うのが、側頭葉にある建物の3Dデータです。
僕が見たのは、記憶の中にある隣の家の屋根だったんでしょう。
そして、屋根の上を自分が飛び回る様子を作り出したんです。
これが、幽体離脱です。
明晰夢は、夢の中で目覚めて、自分の好きな夢をみることができます。
これも同じです。
もう少し考えてみます。
意識は自分の体があるとか、世界があるって考えますよね。
自分の体は体性感覚野、世界の構成するパーツは側頭葉にありましたよね。
そして、意識自体は前頭前野にあると言われています。
これら、すべて大脳にあります。
ということは、大脳を獲得するまで進化して、はじめて世界があるとか、世界の中に自分がいるとかって感じることができるわけです。
だから、大脳がほとんど発達していない魚類とか爬虫類は、世界があるとか、自分がいるとか思ってないわけです。
それらの生物は、環境に対する反射だけで生きていると思われます。
世界があるとか、物があるとかって世界観を持てるのは、頭の中に仮想世界を作ってるからでしたよね。
じゃぁ、大脳を持たない生物と仮想世界で世界を認識する生物の最大の違いは何でしょう?
それは、世界をデータとして扱えるかどうかってことです。
仮想世界を持つことで、自分やものをデータとして扱うことができます。
意識は、現実に存在するものじゃなくて、頭の中のデータとしてのものを認識します。
厳密には、現実に存在する実体に、データとしてのものを重ね合わせます。
そして、意識は、実体を見ながら、じつはデータの方を見ています。
たとえば、植物判定アプリってあるでしょ。
スマホで花の写真を撮ったら、花の名前を教えてくれるアプリです。
あれと同じです。
無意識は、実際に見える部分と、それに自由に書き込めるデータ部分に分けて管理します。
そして、無意識が「バラ」と判定したら、データ部分に「バラ」と追記します。
意識は、実体かデータか区別せずにまとめて認識します。
だから、実体の花を見て、「あっ、バラ」と言うわけです。
今、言葉で言いましたよね。
つまり、これだけの仕組みが備わって、初めて言葉をしゃべることができるんです。
逆に言うと、環境への反射だけで生きている魚やカエルは言葉をしゃべることができません。
今の人型ロボットは、まだ、意識がありません。
それは、体の制御と世界の認識と言葉がバラバラだからです。
でも、これらは密接に関係していますし、人の脳は進化の過程でこれらを順番に獲得してきました。
ドラえもんのようなロボットを作るには、次は、この段階を実装する必要がありそうです。
はい、今回はここまでです。
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それから、意識の仮想世界仮説に関しては、よかったらこちらの本を読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!
第579回 AIロボットは幽体離脱するか?
