第599回 右脳 えっ、まだ、時間が存在すると思ってるの?


ロボマインド・プロジェクト、第599弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

ちょっと前ですけど、第584回から589回までデイヴィッド・イーグルマンの『あなたの知らない脳』を紹介していました。

この本、なかなか面白くて全部紹介する予定だったんですけど、途中で別の話を挟んでちょっと時間が空いてしまいましたけど、また再開します。
今日は、イーグルマンのTEDの動画から紹介します。

以前の話も含めて簡単に紹介します。
イーグルマンは感覚と脳の処理の研究をしています。
たとえば、カメラで撮影した映像を多数の電極で電圧に変換して額で感じる装置を作りました。

そしたら、その人は、目の前にあるものを額で感じるようになったそうです。
さらに工夫して、この電極を舌に装着する装置を作って、盲目の人に使ってもらったそうです。
そしたら、その人はボールをカゴに投げ入れたりできるようにあったそうです。

次は、音を別の感覚に変換します。
それは、マイクで拾った音声をチョッキに埋め込まれた多数のバイブレーターに変換することで、音を背中で聞くことができます。
それが、この装置です。
https://www.youtube.com/watch?v=dYd45SmqJDA
11:43~
音声をリアルタイムで背中で感じます。
このチョッキを聴覚障害者のジョナサンに着てもらいました。
12:32~
背中で聞いた言葉をホワイトボードに正確に書いていきます。
しかも、これは1日2時間の訓練をした5日目です。

音声だけじゃありません。
16:23~
これは、ドローンの傾きなどのセンサー情報を背中で感じさせています。
これによって、操縦者は自分がドローンになって飛んでるように感じて操縦できるようになります。
いやぁ、脳ってすごいですよねぇ。
何が入力されているかなんか関係ないんです。
訓練することで、入力パターンから世界を正確に予測できることができるようになるんです。

さて、それじゃぁ、これは何をしているかわかりますか?
14:31~
被験者は、インターネットからのリアルタイムデータを5秒間感じます。
その後、二つのボタンが現れてどちらかを選択します。
被験者は何のデータか知りません。
選択が正しかったか1秒後にフィードバックが与えられます。
ここで見たいのは、被験者はパターンが何を意味するのか知らないわけですが、どちらのボタンを押せばよいか、正しく判断できるようになるかどうかです。

それじゃぁ、答えです。
被験者が感じていたのは、リアルタイムの株価データでした。
残念ながら、この実験はうまくいかなかったようで、いくら優秀な脳でも株価を正確に予測できるようにはならなかったようです。

まぁ、これは、TEDのネタとして用意した実験で、会場でもかなりウケていました。
でも、ここ、ネタで終わらせたらダメなんですよ。
もっと、深く掘り下げるべきなんですよ。
株価を予測しようってことじゃないですよ。
そうじゃなくて、同じように背中で感じるデータなのに、音声やドローンの操縦はできても、株価予測はできないのかってことです。
一番の原因は、未来を予測させようとしているからですよね。
つまり、時間です。
ドローンの操縦で予測しているのは空間です。
じゃぁ、時間と空間、いったい何が違うんでしょう?
ここ、掘り下げていくと、とんでもない事実が見えてくるんです。
それは、時間は存在しないってことです。
これが今回のテーマです。
えっ、まだ、時間が存在すると思ってるの?
それでは、始めましょう!

まず、「見る」とはどういうことかからです。
現実世界を見るとは、見たままの光景を脳内に仮想的に再構築して、それを意識が認識することです。
ただし、これは僕が提唱する意識の仮想世界仮説で、一般に認められているわけじゃありません。
ただ、意識の仮想世界仮説で説明すると今回の現象、矛盾なく説明できるんです。
そのことは後で説明しますけど、最も重要なのは脳内に仮想世界を作るという点です。
逆に言うと、目からの情報かどうかはそれほど重要じゃありません。
たとえば、世界を額や舌、背中で感じても、脳内でそれを仮想世界に変換できれば、世界が見えるんです。
実際、コウモリは超音波の反射音を耳で聞いて飛びますけど、これは現実世界を耳で見ていると言えます。

ここから言えるのは、脳は外部情報を基に、現実世界を再現する機能があるということです。
その情報が、たまたま舌で感じる情報であっても、情報が現実世界の空間情報であれば、味でなくて、空間を感じるわけです。
もちろん、それが味情報であれば、味を感じます。
もしかしたら、味覚センサーからの情報を背中に振動として受け取れば、背中で味を感じるかもしれません。

脳の情報処理の目的は、現実世界を仮想的に脳内に作り出すことです。¥
つまり、脳は、現実世界がどのようなものか先に知っているわけです。

いや、この言い方は正確じゃありません。
脳は、脳内にある世界でしか現実世界を認識できません。

つまりね、もしかしたら、本当の現実世界は、僕らが思っているものとは全く違うかもしれないんですよ。
でも、本当の現実世界の内、僕らが理解できるものだけ取り出して脳内の再現しているのは間違いありません。
だから、僕らが認識しているのは、現実世界の一部とは言えます。

脳が現実世界を忠実に再現するなら、それほど大きな問題はありません。
でも、見えてる現実世界をそっくりそのまま忠実に再現するのは情報量と計算量の関係から限界があります。
かといって、見えている世界の一部が欠けたりしたら混乱しますよね。
仮想世界を作ったり、補ったりするのが無意識です。
無意識が作ったか仮想世界を認識するのが意識です。

そこで、無意識はおそらくこうだろうと補って仮想世界を作ることがあります。
というか、かなりそういったことをしてると思うんですけど、ただ、僕らが気付かないだけです。

たとえば、僕は、朝起きたてまずするのが、PCを起動することです。
電源スイッチの近くに、小さいLEDランプがあって、起動中はランダムに点滅しています。
この前、朝起きて、起動しようとしたら、このランプが一瞬光ったんですよ。
あれ、シャットダウンし忘れたかなと思ってみたずっと消えています。
LEDが光ったのは見間違いでした。

じゃぁ、なんで見間違ったんでしょう?
それは、無意識が仮想世界を作るとき、いつも光っているから、光らせたんでしょう。
というか、見間違えるってことが起こること自体がおかしいです。
もし、意識が外部情報そのものを受け取っていたとすれば、それがすべてじゃないですか。
実際にLEDが光っていたかどうかは関係ありません。
光ったと感じただけです。
それを、見間違えたというのは、真実の現実世界があって、頭の中に作られた仮想世界がx真実の現実世界と違ったっていうことでしょ。
つまり、見間違えるということ自体、頭の中に仮想世界を作って認識していることの証拠といえます。

別の視点から考えます。
PCというのは電源ボタンとかLEDランプがあると知っているわけですよね。
これは、別の言い方をすれば、PCの意味と言えます。
それとは別にただの視覚情報があるわけです。
視覚情報というのは、網膜からの三原色の点々の集まりです。
そこに何が映っているかというときの「何」が意味です。
ただの色の点々が生の視覚情報です。
脳内に作られる仮想世界には意味があります。
感覚器からの生データには意味がありません。

さっき言いましたけど、脳の情報処理は、頭の外にある現実世界を脳内の仮想世界として再現することです。
ここから、どうやら、脳内にはこの二種類のデータ処理があると言えそうです。
一つは、感覚器からの生データから仮想世界を作る処理。
もう一つは、意味から仮想世界を作る処理です。

じつは、この二つのデータ処理、脳内ではっきりと分かれています。
生データから仮想世界を作るのは右脳、意味から仮想世界を作るのは左脳です。

ここ、詳しく説明します。
左脳は言語とか意味を司ります。
右脳は、イメージとか空間把握です。
ちょっとわかりにくいですけど、第504回で紹介した『脳の右側で描け』でこのことを詳しく解説しています。

これは、右脳を使ったデッサンの仕方の本です。
たとえば、生徒にはピカソのこの絵をデッサンしてもらいます。

ただ、そのまま普通にかくと左脳を使ってしまいます。
左脳を使うというのは、これは顔、これは眼鏡って意味を考えることです。
今やりたいのは、見たまま、かいてある線のとおりに正確にデッサンすることです。
そこで、この絵をさかさまにしてデッサンしてもらいます。

すると、一見何かよくわからないので、線を忠実に再現しようとします。
ある生徒は授業に遅れてきて、さかさまにデッサンするということを聞いてなくて、間違って普通にデッサンしたそうです。
そうやってかいたのがこの絵です。

あまりうまいとはいえないですよね。
翌日、さかさまにして描いたのがこれです。

見違えるほどうまくかけていますよね。
つまり、左脳で意味を考えて世界を見るとき、それは正しい世界ではないってことです。

さて、これでようやく準備が整いました。
ここからが本題です。
今回のテーマは「時間」です。

もう一度整理しますと、脳の目的は頭の外の現実世界を忠実に脳内に再現することです。
そのとき、左脳と右脳では異なる方法で再現します。
左脳は意味的に正しい世界を再現して、右脳は、見たままを忠実に再現しようとします。
つまり、左脳は、見たままを忠実に再現しません。
だから、見間違えるんです。
逆に言えば、左脳は、目に見えない世界も再現できます。
見えている世界というのは、今、この瞬間に存在する世界ですよね。
それは、たった一つで、必ず正解があるものです。
そういった世界を忠実に再現するのに長けているのが右脳です。
その時使うのは、目からの視覚情報だけでなくて、背中からの振動で構いません。
右脳は、それらの情報を基に正確に現実世界を再現します。

再現するのは、三次元空間としての世界だけじゃありません。
音声でも可能です。
だから、言葉を背中で聞くことも可能なんです。
それから、ドローンの傾き具合とかでも可能です。
たった一つの正解が存在する現実世界からの情報であれば、右脳はそれを忠実に脳内に再現することができます。

でも、うまくできなかったものがありますよね。
それは、株価データの予測です。
なぜ、うまくいかなかったのでしょう?

それは、株価データは正解がきまっていないからです。
上がるか下がるかは、その瞬間にはわかりません。
分かるのは、今、現在の株価だけです。
それは正確にわかります。
でも、その後、上がるか下がるかはわかりません。
つまり、正解が一つに絞れないんです。
そんなタイプの情報処理は右脳にはできません。
というか、理解できません。

ここで、理解について考えます。
理解というのは、そのような世界を想像できるということです。
想像できるというのは、脳内に再現できるということです。

右脳ができるのは、現実世界を忠実に再現することです。
デッサンの場合なら、線の傾きとか長さとかです。
その線が、顔か眼鏡かといったことは理解しません。
意味を理解するのは左脳です。

左脳は、意味を使って世界を認識します。
そのため、現実世界を忠実に再現するわけじゃありません。
その代わり、今、この瞬間の現実世界にないものも再現できます。
脳内に再現するというのが、理解するということです。
左脳にも、株価が上がるか下がるか、正確に予測することはできません。
でも、少なくとも上がるとか、下がるといった意味は理解できます。
右脳は、それさえも理解できないんです。

右脳は、今かいている線が顔か眼鏡かもわかりません。
椅子に座っている人を描いていることすらわかっていません。
だから、その人が椅子から立ち上がることすら想像できません。
だって、右脳は、感覚器からの生データを感じることしかできませんから。
そのデータが何を意味するのかすらわかっていません。
椅子から立ち上がるところを想像するには、それが、人とか椅子とか意味で理解しないといけません。
意味で理解していない以上、それがどう変化するかなんか想像できないでしょ。

同じことは株価でも言えます。
それが株価のデータとわかれば、今後、上がるか下がるかといったことは想像することはできます。
想像するのは左脳です。

まず、現実世界があります。
それを忠実に再現するのが右脳です。
それに意味を与えるのが左脳です。
意味を使って現実世界を再現して初めて、その世界がどのように変化するのか想像できます。

ここで重要なキーワードが出てきました。
それは「変化」です。
変化というのは、物事が移り変わるさまです。
そして、「変化」の背後にあるのが「時間」です。
変化を想像できるという時点で、時間を理解できるということです。
整理しますよ。

左脳は、意味で世界を再現します。
顔とか人とか椅子とかって意味単位で世界を認識します。
それができて、はじめて、椅子から立つとかって変化を想像できます。
変化や動きを想像するとき、その背後にあるのが時間です。
つまり、時間のある世界を想像、または理解できるのは左脳となります。

別の言い方をすると、時間が存在するのは左脳だけといえます。
または、左脳が認識する世界には時間があるといえます。
つまり、右脳には時間がありません。

このことは、ジル・ボルト・テイラーの話で何度もしました。
脳科学者のジルは、ある日、左脳が脳卒中となりました。
左脳が停止して右脳の世界を感じたそうです。
その時の様子をこう語っています。
まず、自分の体の境界がわからなくなったと言います。
腕や壁があるのは見えます。
ただ、どこまでが自分の腕で、どこからが壁かがわからなくなったと言います。

腕とか壁って言葉ですよね。
または意味です。
世界に意味付けしているのは左脳です。
だから、左脳が停止したとき、世界に与えていた意味が消えたわけです。
これが、腕と壁の境目が付かなくなったということです。

それから、頭の中の思考も消えたと言っていました。
今日の仕事は何で、だれにメールしないといけないとか、そんな頭の中の独り言が一切消えたそうです。
言語を司るのは左脳なので、これはわかりますよね。

それからもう一つ言っていたのは、右脳で感じる世界には、今、この瞬間しかないということです。
時間感覚が一切消えたといっていました。
そう感じているのはジルの意識です。
意識は、時間感覚の記憶があったんでしょう。
変化する世界を覚えていたんでしょう。
それが、今、感じている世界は、一切変化しません。
変化しないというか、変化することを想像できません。
変化を想像するには、見えている世界を意味単位で切り出さないといけません。
それをするのが左脳ですけど、左脳が停止した今、変化する世界を想像できないわけです。
だから、時間が存在しない世界を感じていたわけです。

ここで改めて考えてみましょう。
じゃぁ、世界には、本当に時間なんて、あるんでしょうか?
今説明したとおり、時間というのは、左脳の情報処理が作り出したものです。
現実世界に明らかに存在するのは、今、この瞬間だけです。
そういう意味では、時間は存在しないと言えます。

逆に、時間が存在すると仮定しましょう。
そして、脳はそれを感じ取ることができるとします。
じゃぁ、なぜ、時間を感じ取れるんでしょう?
それは、左脳が作り出した世界に時間があるからですよね。
右脳で感じる世界には時間がありません。
左脳に感じる世界には時間があります。

これって、脳が右脳と左脳に分かれて、それぞれ別の情報処理をしてるから、空間があって、時間がある世界を感じてるわけでしょ。
じゃぁ、もう一歩踏み込んでみましょ。
もし、脳が三つに分割していたとしたらどうでしょう?
一つ目の脳は空間、二つ目の脳は時間。
僕らはその二つしかないのでそれ以上は想像できません。
でも、三つ目の脳がある生物は、時間とも空間とも言えない、もう一つの次元を想像できるのかもしれません。
もしかしたら、本当の現実世界には、そんな誰も想像できない未知の次元があるのかもしれません。
それを知らないのは、僕らは右脳と左脳しか持ってないからです。

もしかしたら、本当の現実世界は、僕らが見て、感じてる世界とは想像もつかないものかもしれませんよ。



はい、今回はここまでです。
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それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!