第598回 神は、なぜ、沈黙したのか?


ロボマインド・プロジェクト、第598弾!
こんにちは、ロボマインドの田方です。

前回、『神々の沈黙』の本について考察しました。

この本では、人間は約3000年前に意識が生まれたと言います。
どういうことかというと、3000年以上前の人間は、神の声を聞いて、神の声に従って生きていたといいます。
「そんなバカな」と思いましたけど、神話や聖書を読むと、確かにそうなっているんです。

神が剣を納めよといって剣を納めたとか、カナンの地を与えると神が言ったから、カナンの地に住むことにしたとか。
それが、約3000年前から、徐々に神の声が聞こえなくなったと言います。
そのころから、人間は自分の頭で考えて行動するようになりました。
それが意識の誕生というわけです。

ここで、大きな疑問がでてきます。
それは、「神は本当にいるのか?」です。
もしいるとしたら、神は、どのようにしてこの世界に介入したんでしょう?

前回は、そのことについて考察しました。
詳しくは、前回の動画を見てもらったらいいんですけど、簡単に説明しておきます。

まず、大前提として、神は、科学的には存在しないとします。
注意してほしいのは、「科学的には」ということです。
科学というのは客観的に観測可能なものしか対象としません。
逆に言うと、客観的に観察できないものは科学の対象になりません。
客観的に観察できないものの代表が主観です。

じゃぁ、主観とは何でしょう。
それは、僕らが心の中で感じたり、思い浮かべる物事です。

生物は、五感を介して現実世界を認識します。
僕らは、五感からの感覚情報を基に脳内に仮想世界を作って、それを介して現実世界を認識します。
この世界認識システムが主観です。
そして、脳内の仮想世界は客観的に観測できません。
つまり、脳内の仮想世界なら、神が介入する余地があるというわけです。

ヒトはサルから進化したというのが進化論です。
進化論は、神の存在を否定します。
人は神が作ったというのが創造論です。
進化論と創造論は相いれません。
ただし、これは客観的に観測可能なものだけを対象とした場合です。
主観が感じることまで含めると、進化論も創造論も共存できます。
そこで、これらを融合した進化創造論という新しい説を提唱しました。
それが前回の話です。

神がこの世界にどこまで介入できるのかという議論は古くからあります。
最も有名なのは、物理学者のスティーブン・ホーキングの『ホーキング宇宙を語る』でしょう。

この宇宙には神が介入する余地はありません。
逆に言うと、この宇宙の外側なら神が介入する余地があるということです。
ということは、この宇宙と、宇宙の外側の境目なら神が介入する余地がギリギリあるということです。
その一つが、ビッグバンが爆発した瞬間です。
ビッグバンの爆発、もしかしたら、ここは神が介在したのかもしれません。
これがホーキング博士の主張です。
ホーキング博士は、そこまで入っていないですけど、もしかしたら、ビッグバンを爆発させたのは神かもしれません。

ホーキング博士は、この世界と別の世界の境界に神が介在する余地があると言います。
僕もその考えは同じです。
違うのは、ホーキング博士はこの宇宙の始まりに注目したのに対し、僕は、主観と客観の境界に注目したということです。

今回はその続きになります。
神の介在について、今まで進化論、物理学の視点から考えてきましたけど、今回は、人工知能の視点から考えます。
じつは、人工知能から考えると、『神々の沈黙』の最大の謎が解けるんです。
これが、今回のテーマです。
神は、なぜ、沈黙したのか。
それでは、始めましょう!

まずは、前提となる考えを整理しておきます。
脳は感覚器からの情報を基に行動を決定します。
生物の情報処理は、二つのタイプに分かれます。
一つは反応タイプです。

カエルは、目の前で虫が動いたら、それに反応して捕まえて食べます。
天敵の鳥の影を感じたら、それに反応して素早く逃げます。
感覚器から特定のパターンの入力を検知すると、それに応じた動きをするわけです。

もう一つは「世界がある」と認識するタイプです。
僕らは、目の前にリンゴがある、机があるって形式で世界を認識しますよね。
ただし、リンゴを認識した瞬間、いきなりかぶりついたりしないですよね。
認識した瞬間、いきなりかぶりつくのが反応タイプの生物です。

僕らは、リンゴを見て、食べようか、食べないか、そもそも、それは食べていいのかとか、いろんなことを考えます。
そんな風に考えるとき、最初にやるべきことが、「リンゴがある」とか、「ものがある」という形式で世界を認識することです。

ここから人工知能の話をします。
今は第三次AIブームです。
今のAIブームの始まりはディープラーニングです。
それ以前は、人工知能の冬の時代と言われていましたけど、そのころの人工知能の中心はサポートベクターマシンです。

サポートベクターマシンというは、二種類の要素があるとき、それを分類する境界線を求めるアルゴリズムです。
犬と猫の大量の画像があって、その境界を求めるとかです。

ニューラルネットワークとか、ディープラーニングもこの延長にあります。
今のAIブームの始まりは、写真に写っている画像を認識するテストで、ディープラーニングが人間とほぼ同程度に認識できるようになったことです。
これは、本当に画期的なことでした。

僕らは、写真に何が映っているか当たり前にわかりますよね。
でも、それってコンピュータにとっては、とんでもなく難しいんです。
それがついに、ディープラーニングで人間と同じことができるようになったんです。

そのキーとなる技術が、大量のデータを似たもの同士で分類するというアルゴリズムです。
その手法に、サポートベクターマシンとか、ニューラルネットワークとか、ディープラーニングがあるわけです。
これらを機械学習と言います。

その仕組みは、最初に猫の画像、犬の画像、虎の画像って大量の画像を用意しておきます。
最初に教える画像のことを教師画像といいます。

そして、画像から目の形、口の形、耳の形といった各動物の特徴パターンを抽出します。
そうすると、未知の画像が入力されても、学習した特徴から、これは虎らしいと判断できるようになります。

これで人間と同程度の精度になったということは、人間も同じような情報処理をしているといえそうです。
実際、確かに僕らもそんな風にして犬と猫を見分けていますよね。

これが機械学習の大雑把な仕組みです。
さて、機械学習には二種類あります。
一つは教師有り学習、もう一つは教師無し学習です。

教師有り学習というのは、今説明したみたいに、学習データに、予め、これは犬、これは猫って正解を教えておくタイプです。
教師無し学習というのは、どれが正解か教えずに学習するタイプです。

もちろん、全く何も教えないというわけじゃありません。
これは犬、これは猫って数少ないデータはあります。
でも、機械学習に必要なのは大量のデータでしたよね。
そこで、数少ないデータから、大量のデータを自ら作り出します。
たとえば動物画像だったら、耳の部分を真っ黒なブロックで塗りつぶした画像を生成します。
これなら大量のデータを作り出せますよね。

そして、これを今ある学習モデルで推測します。
それで間違ったらモデルを修正します。
これを正解するまで繰り返します。
こうすることで、少ない画像でも正しくその特徴パターンを学習することができるようになります。

さっき、生物の二種類の情報処理について説明しましたよね。
一つは反応タイプ、もう一つは「世界がある」と認識するタイプです。
機械学習もその流れで考えるんです。

どういうことかというと、機械学習は大量のデータから最適な答えを導き出すアルゴリズムです。
それは、反応タイプに使うこともできます。
たとえば虫の動きのパターンを学習して、虫とそれ以外を分類するとかです。
そうすることで、食べられる虫の動きだけを正しく抽出して、素早く食べることができるようになります。
これが反応タイプの生物です。

ただ、これだと、虫とか天敵とか、自分に直接関係する動きを検出するだけでとどまります。
それだと応用があまり効きません。
そこで、おそらく、哺乳類ぐらいから、世界そのものを抽出しようとしたんでしょう。
そして、ここにも機械学習を適用したんです。

機械学習は、まず最初、境界線を抽出しましたよね。
脳は、境界線を抽出するのが得意なんです。

それを見える世界全てに適用するんです。
すると、何もない空間から物体の境界線を抽出されますよね。
つまり、三次元空間の中に物体が切り出されるわけです。
これが最も原始的な世界の認識です。
または、何もない三次元空間の中に物体があるという形式のデータ構造です。
これが世界です。

じゃぁ、さっきの反応タイプとの違いがわかりましたか?
反応タイプは、空間に物体があるという形で認識しません。
ただ、ある動きのパターンを検知して、それに対してどう行動するかです。
つまり、検知から行動までをひとまとまりのプログラムがあるんです。
これは、たとえば野球だと、ピッチャーの投げた球の動きに反応して素早くバットを振るといったタイプの学習です。

一方、世界を認識するタイプの学習は、行動でなく、世界そのものを把握しようとします。
目的は、世界をできるだけ正しく把握することです。
つまり、バットを振るためとか、虫を捕まえるためとかって一つの行動のための把握じゃありません。
そうじゃなくて、世界そのものを正確に把握するのが目的です。

じゃぁ、この場合、何が問題になるでしょう?
それは、計算量です。

目的が一つなら、計算することは少なくて済みます。
でも、世界の全てを把握しようとしたら、膨大な計算が必要です。
だから進化で脳が大きくなったんです。

これ見たらわかりますけど、ヒトはものすごく大きな脳をしているでしょ。
それに比べて魚類や両生類の脳はちっちゃいでしょ。
それは、大した計算がいらないからです。
そして、ヒトの脳のほとんどは大脳です。
つまり、ここで世界そのものを作り出しているんです。
または、大脳の中に現実世界を忠実に再現した仮想世界が作られるんです。

ここまではいいですよね。
さて、ここからが本題です。
今回のテーマは、神はなぜ、沈黙するかです。

『神々の沈黙』の本によると、3000年以上前、人類は神の声を聞いて、神の言う通りに行動していました。
それから、神は、客観的に観測可能な物理世界には介入できなかったですよね。
だから、神が介入できたのは、宇宙が始まるビッグバンの瞬間だけだとホーキング博士は言ったわけです。
それから、客観的な現実世界には介入できなくても、主観が感じる世界には神が介入できましたよね。
主観が感じる世界というのが脳内に作られた仮想世界です。

それから、反応タイプの生物から、仮想世界を使って世界を認識するタイプの生物に情報処理の仕方が大きく変わりました。
もしかしたら、この情報処理の変更は、神の介入があったのかもしれません。
なぜなら、仮想世界は物理世界の外なので、神が介入する余地があるからです。

基本的な確認ですけど、神が介入するということは、少なくとも、神が存在することが前提となりますよね。
つまり、この世界は神が創造したという世界観です。
https://www.youtube.com/watch?v=8MFAZxbqcHQ
0:02~0:21ぐらい
https://www.youtube.com/watch?v=Q1_HfhtB5eo (字幕なし)

それでは、ここからは、神がこの世界を創造したとして話を進めます。

さて、神は、当初、人間に正しい道を教えていました。
これ、一見すると、矛盾しているんですよ。
なぜなら、正しい道を神が教えるなら、世界を認識させる必要はありません。
反応タイプの生物で十分です。
予め正しい行動をプログラムにして与えておけば、生物は悩むことなく、その正しい行動をするだけです。

ただ、反応タイプには問題があります。
それは、プログラムが予め決まっているので、環境の変化に対応できません。
だから、隕石が落ちたり、氷河期になるとか、環境が大きく変わるとすぐに絶滅してしまいます。
そこで、神様は、自分で行動を決められる生物を創ろうとしました。
それが人間です。

でも、それまでの生物は、何も考えずに、決められたプログラムで動いていただけでした。
そこから、いきなり、自分で決めて行動しなさいといわれても困ります。

そこで慈悲深い神様は、人間を段階的に成長させて、自分で行動を決められるように導くことにしたんです。
その第一段階が、世界を認識するという段階です。
神様は、脳のアルゴリズムに少し手を加えて、反応タイプから世界を認識するタイプの生物を作りました。
これで、「世界がある」、「自分は世界の中にいる」と考えるようになりました。

でも、世界があると思っても、どう行動していいかわかりません。
そこで、最初は、正しい行動を教えたわけです。
「カナンの地に向かえ」とかです。
これが神の声です。
ここまでは前回の話です。

今回は、この神の声とは何かです。
それを人工知能から読み解くわけです。
ここまで言えばわかりますよね。
神の声とは何か。
それは、教師データです。
機械学習でいえば、教師有り学習です。

人びとは、最初、神の声を聞いて、その通り行動したらすべてうまくいっていました。
何も考えていませんけど、どう行動したかは覚えています。
何が起こって、どうなって、こう行動したらうまくいったという記憶です。
何が起こってとか、どうなったとか、これらが要素です。
物事を要素に分解して、特徴パターンを抽出できるようになったわけです。
ここまでが第一段階です。

「さて、そろそろいいだろう」
ある日、神様はそう言いました。
そうして、その日以来、人々に声をかけることを止めてしまいました。

困ったのは人間の方です。
今まで、神様が言ったとおりにしてたのに、それができなくなったわけです。
正しい道がわからないんです。
未来が見えないんです。

そこで、いろんなことを想定してみました。
もし、こうしたらどうだろう。
こうしてああなったら、どうしたらいいだろう。
試行錯誤です。
人びとは、初めて、自分で考えるようになったんです。
これって、いってみれば教師無し学習ですよね。
未来がマスクされているんです。
それを様々な要素から予測するわけです。

まさに、人工知能の歴史がたどってきたことと同じです。
人工知能は、人類がたどってきたことをもう一度、コンピュータで再現しているわけです。
そう考えると、今のAIがやがて、人間と同じ意識を持つようになるのも時間の問題と言えそうです。

AIのアルゴリズムを改良したのは人間ですよね。
もし、それでAIに意識が生まれたとしたら、人間に意識が生まれたのは、やっぱり神が介入したとなるじゃないですか。

https://www.youtube.com/watch?v=Q1_HfhtB5eo
(0:40~とか、適当に編集して)
本当に、こんな神がいて、この世界はこんな神が作ったんですかねぇ。
僕らは、神の作ったテーブルで生きているだけなんですかねぇ。

はい、今回はここまでです。
この動画がおもしろかったらチャンネル登録、高評価お願いしますね。
それから、よかったらこちらの本も読んでください。
それじゃぁ、次回も、おっ楽しみに!